「十如是」とは、『妙法蓮華経』の「方便品」に登場する、仏教の重要な概念です。諸法実相、つまりこの世のすべての存在や現象のありのままの姿を説明するための、十の要素を指しています。 具体的には、
・如是相(物事の外見や形)
・如是性(内的な性質)
・如是体(本体そのもの)
・如是力(内在する力や機能)
・如是作(具体的な行為や働き)
・如是因(結果を生む直接的な原因)
・如是縁(原因を助けて結果を生じさせる間接的な条件)
・如是果(原因と縁によって生じた結果)
・如是報(結果として受ける応報)
・如是本末究竟等(これら「相」から「報」までの一切が、究極的には平等であること)
であり、これらの要素は仏教における普遍的な法則を示しており、宇宙観や人生観を包括的に表現するもので、後に天台宗の「一念三千」といった思想にも影響を与えました。
空海は、この「十如是」の教えを飛白体という視覚的に特徴のある書体で表現することで、教えの深遠さと書道の芸術性を融合させました。この書を含む空海の飛白の書は、仏教思想と書道芸術の結びつきの象徴とされています。


この『飛白十如是』は、かつて京都の神護寺に伝えられていた作品でしたが、現在は残念ながら現存していません。明治の初めに盗難に遭い、その後、犯人によって焼失してしまったためです。明治初年、当時の文部省図書所が神護寺から送られてきたこの書を見て、その筆致に感歎し、明治天皇に御覧いただき、明治天皇が「面白いものだ」と評したため、実物大の写真が撮影され、原本は神護寺に返還されましたが、その後盗難に遭い焼失したため、写真が唯一無二の存在となりました。写真は、後に研究者に頒布され、その貴重さが認識されるに至りました。
掲載品は、巻菱湖記念時代館所蔵の『伝 空海 書 飛白十如是 コロタイプ印刷本』になります。
※ 『空海の庫を開く 1の庫』掲載品
『空海の庫を開く』1の庫
2025年7月より、弘法大師・空海 御生誕1250年(2023年) / 御入定1200年(2034年) 企画として、『文字の国 ー 日本の文字の風景 空海の庫を開く』と題し、長期企画の複数巻(1の庫から8の庫)での書籍刊行を実施いたします。巻菱湖記念時代館 監修・株式会社 創三舎・株式会社 養玲社の合同企画事業として書籍をメインとし、WEBなどからも文字文化遺産を発信してまいります。書籍版とWEB版は、掲載内容が異なりますので、併せてご覧いただければと思います。
『空海の庫を開く 1の庫 』は、墨宝図版をメインとした作りとし、そこに略説明を加えたものとなっております。弘法大師・空海が繋げる文字文化・歴史・観光を主なテーマに構成いたしました。弘法大師・空海を中心とした、日本の文字文化から始まり、歴史・観光をご紹介する書籍となっております。
